京都 進路資料室

-京都の高校 大学合格実績-

『君たちはどう生きるか』の時代―1936年 旧制三高の合格者数ランキング

画版の『君たちはどう生きるか』(原作:吉野源三郎、漫画:羽賀翔一/マガジンハウス)がヒットしています。すでに100万部を超え、同時に発売された原作の新装版も30万部を超えたそうです。

私が原作を岩波文庫版で読んだのは大学1回生の時。元々が「少国民文庫」として児童向けに書かれた作品を、大学生になって初めて読んだというのは、いささか遅くて恥ずかしいのですが、「ものの見方、考え方」「社会科学的認識の方法」という点で、いたく感銘を受けたことを記憶しています。それがいま再評価され、多くの人に読まれているのは大変うれしいです。 

漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか

 
【文庫 】君たちはどう生きるか (岩波文庫)

【文庫 】君たちはどう生きるか (岩波文庫)

 

 

人公のコペル君は中学2年生。原作が刊行されたのは1937年ですから、コペル君が通うのは旧制中学です。

旺文社教育情報センターの「今月の視点 大学入試の〝温故知新〝」(2011年4月)によると1940年当時の旧制中学進学率はわずかに7%。義務教育である現代の中学校とは異なり、旧制中学に通う生徒とは、ほんの一握りのエリート層です。

作中のコペル君の学校での成績は「たいてい一番か二番」の学業優秀な子どもです。2年前に亡くなったお父さんは大銀行の重役。近所に住む「叔父さん」は大学を出て間もない「法学士」という環境ですから、コペル君も中学卒業後は高等学校(旧制)、そして帝大というコースを歩むことが予想されます。

ただし、1940年の旧制高校の生徒数は、全国で2万人以下なので(旧制中学生徒数は43万人)、旧制中学の中でも一部の生徒しか旧制高校へは進めず、受験競争は熾烈を極めたようです。なお、作者の吉野源三郎氏自身は東京高等師範附属中(現在の筑波大附属中高)から旧制一高、東京帝大という経歴です。

そこで、今回は京大ランキングの番外編として、『君たちはどう生きるか』が執筆された1936年当時の旧制第三高等学校(戦後、新制京都大学教養学部に包摂)1年生の出身中学別生徒数を調べてみました。

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※三高入学と京都帝大入学はイコールではないので(三高から他の帝大に進むことも出来たし、他の高校から京都帝大に入学することも可能でした)、現在の京大合格ランキングとは意味合いが異なる点にはご留意ください。

1位はやはり京都府立京都第一中学(京都一中、現在の洛北高校)であり、他を大きく引き離しています。2位、3位にも地元京都の二中、三中が入っています。

大阪の中学出身者が意外と少ないなと感じますが、当時の大阪には官立の旧制大阪高等学校(後の大阪大学教養部)があり、兵庫には姫路高等学校(後の神戸大学教養部)がありましたので、大阪や兵庫の中学生はそちらを目指す人も多かったのでしょう。

また、関西圏には他に7年制高等学校(旧制中学と旧制高校が一体化したもの)として大阪府立の浪速高等学校と、私立の甲南高等学校も存在していました。